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<プロフィール>
PN:
朱門 優(しゅもん ゆう)
職業:
物書き
サークル:
無口な魔女たち
誕生日:
09/03
出身地:
埼玉生まれの埼玉育ち
趣味:
資料集め・散歩
自己紹介:

フリーで活動しています。東京都在住。
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 ──彼女の友人は言っていた。
「この世のすべての事象は“縁”で結ばれている」と。
 では、これも縁だというのか。
 こんなものが縁だというのか。

「お兄ちゃん……」
 少女の嘆きが風に攫われていく。
 かつて、とある地方にて祀られし神に通じるご利益をもたらすと称えられし少女。
 その瞳に映る兄の姿。
 彼女を護る為に飛び出し、倒れ伏した兄──取り囲む黒服たち。
 彼女の内に宿るかのあやかしの力を以ってしても、屈強な黒服たちを一掃するには至らなかった。
 まるで喪に服すかのような彼らの意思は固く、そしてまた、彼らも「ヒト」と呼ぶにはその力はあまりにも異形であった。
「すげーなぁ、お嬢ちゃん。マジモンのヨーカイかよ」
 双刀を手に、眼帯の男が嗤う。
 まるでこの戦を愉しんでいるかのように。
 その隣には、長柄を構える厳しい面持ちの偉丈夫。
「面妖なる者の、なんと凄まじき力の程か。だが、ここを通すわけにはいかぬ」
 その二人は相反するかのようで、その実、番(つがい)の如く一対。

 その意気に触れた時、少女の口許にもまた笑みが広がった。
 冷たく、妖しく、どこか淫靡なそれは──少女であって少女でない、その身体の本当の持ち主のもの。
「正義、か。ほほほ……」
 その性は邪。
 その業は奸。
「……姫の最も嫌いな言葉じゃ」
 暗雲を引き連れるその大妖は、太古の昔より恐怖を振り撒いてきた。
 雲で覆われたこの街に、異種の妖雲が浮かび上がる。

 なれどその口に上る言葉は、今。

「その絵師が傷つけば、姫と共にある優しい女子が泣く」
 炎の眷族を前に、女神の涙によって浄化された魍魎の心に火が点る。
「……それに、その、なんじゃ。御前様を足蹴にされるのは、ちと腹に据えかねる……」
 それは憤怒の灯火。

 ──ここは魔人たちの棲処だった。
 彼ら来訪者たちは、何故、「侵略者」の烙印を押されてしまったのか。
 どこでどう間違ったか、などと、そんな事はいまさら問うても意味がない。

 事態はすでに、取り返しがつかないところまできてしまっていた。

***



 燕子花の華は手折られた。
 可憐で理知的な、その少女の身体に突き刺さったのは、『槍』。
「お嬢様──っ!!」
 信じがたいその光景に、寡黙な従者が声を限りに叫んだ。

 槍を放ったのは少年だ。
 数奇な運命に翻弄された末、従者と対峙する格好となった少年。
 その少年は、初見ではおよそ武人としての片鱗すら感じさせなかった。
 むしろ、従者が警戒していたのはその傍にたたずむ着物姿の少女だった。
 彼女より発せられる底知れぬ力の脈動は、彼ならばこそ感じ取れたものだった。

 だが、少年が武器を手にしたその瞬間、場の空気が変容した。

 そして今、従者が護るべき主人の身体に槍が突き刺さっている。
 不恰好で、つぎはぎだらけの、槍。

 槍を放った少年もまた、驚きを隠せない様子だった。
 彼は例えいかなる事情があるにせよ、女性を傷つけるような真似ができる性格ではなかった。
「怖かった」
 後に彼はそう語る。

 あの可憐にして理知的な少女が、怖かったのだと。
 その内に潜むものの存在を感じ取った時──彼は槍を投擲していたのだ。
 いかに彼が冷静でなかったか、その行動そのものが物語っている。
 彼は“それ”が「槍ではない」と知っていたはずだった。にもかかわらず、恐怖に支配された者が取り乱すまま手近にあるものを投げつけるかのように、“それ”を投げてしまったのだ。
 その少女の恐ろしさを感じ取っていた時点で、彼の内に宿る能力は解放されていたというのに──

 ──解放されたその能力を以って“それ”を使用すれば、いかなる事態が引き起こされるか知っていたはずなのに。

「殿……下……?」
 可憐な少女の身体に突き刺さった『槍』は、彼女の命を脅かしはしなかった。
 起きた変化は、絶命ではなく、反転。
 彼女の体内で式が反転するという事は、「ヒトである事」を選んだ彼女をそれ以前の存在へと還元する事を意味する。
 捨てたはずのその名。

『Mephistopheles』

 その瞬間、従者の身にもまた変化が起こった。
 彼は取り戻したのだ──主人がヒトならざる器を捨てた時に共に廃てた、無限大を象徴する蛇としての存在を。
 鎖に変じたその身体が、在るべき場所へと絡みつく。
 自らの支配者たる、魔女の腕へと。
「お下がりくだされ」
 一歩を踏み出し対峙したのも、また魔女。
 この閉ざされた街における魔術王。
「あら。この貴に人間の魔術師が噛み付こうというんですの? 可愛いですわね、お姫サマ」
「彼を護るのは、遠い昔に誓った事なれば」
「ふふっ……似た者同士というコトですのね」


***



 ……魂が震えたのは、その時。
 強く、気高く、そして脆かった──騎士の魂が。
「……戦の臭いだ」
 その声を発したのは、妹を護る為に果敢にもこの地の守護者たちに立ち向かい、為す術もなく地べたを舐めた画家だった。
 彼を知る者ならば、その声の“質”が違う事に気付いただろう──その声は普段の彼からは想像もつかないほどに深く、静かで、なにより歓喜に震えていた。
 画家であったはずのその男は看破していた。
 この場には、双刀の美丈夫と長柄の無双の他に、巧妙という言葉ですら追いつけない次元の隠形を用いて、陰に溶け潜んでいた暗殺者の存在がある事を。
「ククク……さあ、闘争の時間だ」
 だが彼が獲物と認識していたのは、その暗殺者ではなかった。
 無論、双刀と長柄の一対の武芸者でもない。

 彼が相対するに相応しい相手として望んだのは──少女。
 この場に居合わせてしまった不幸に見舞われたとしか思えない、朗らかで、あたたかい──その手に和傘を持つ少女。
「神殺し。貴様と闘ってみたい」
 画家の口から漏れたその愉悦は、あまりにも沙汰の外。
 なれど。
「……わかるのですか」
 和傘の少女から朗らかな笑みが消える。
「ああ。私もかつて、神を殺した事があってな……」
 画家は気付いていた。
 和傘の少女が黒服たちを監視していた事を。
 隠形を極めたはずの暗殺者などより遥かに高次に息を潜めて、その場に溶け込んでいた事を。

 その画家は、かつてヒトでありながらヒトの限界を凌駕した存在だった。
 天上の使いであるはずの有翼たちを引き裂き、貶め、中空の庭園で高笑いを上げた存在だった。


 ──今、最強を決める闘いが始まろうとしている。


 多少の不整合は気にするな!
 筆の止まったとある新鋭作家が執筆する勝手にクロスオーバー作品『実と毒と雪と雨と』。
 斧を研ぐ少女、マウントポジションの少女、カラクリから妖精、そしてこの街の支配者と続々参戦!!
 かつて伝説を築いた町医者は勿論、異世界から大鎌使いや偽神も召還されるぞ!!
 定価1200円にて、見知らぬ小道の先にある古本屋で未完のまま発売中。
 買わないとシルクハットに燕尾服の包帯男が押し売りにやって来るっ!!



 という

 方々にごめんなさい。
 ……全部のネタがわかった人はどれだけいたんだろう。





 明日からの仕事のことばかり考えていたら、今日が何の日か忘れていました。
 さっき慌てて書いたので色々とアレな気もしますが、気にしない方向でお願いします。
 お祭りという事で楽しんでいただければ。


 サイトを立ち上げて初めてのエイプリルフールだったので、何かやってみたかっただけなんだ。

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